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木田 さとみ さん

自分の生活習慣を自分でよくしていける社会をめざして

コーチングやストレングスファインダー®を長く学び続け、それらへの造詣も深い木田さんの本業は、コーチではなく内科医だ。普段から静かでクールに事実を見据えているのだが、その中には実は熱い思いが燃えている。その思いが、木田さんを「予防医療」の道へ進ませ、さらには世の中の健康保険にまで影響を与えるかもしれない。木田さんのその熱い思いとは・・・?
木田さんが、医師になるまでのことを教えてください。
医師になったのは、父が医師でそれがいちばん身近な職業だったということ、そして人の役に立てそうで、一人でも食べていける仕事だ、と思ったからです。もともとはピアニストになりたかったんです(笑)。小学校1年くらいからピアノを習っていて、小学校3年生くらいのとき地元の先生の恩師に習うために、福島から東京までレッスンに通い始めました。だから大学も音大のピアノ科に進むつもりだったのですが、高2から高3に上がるクラス替えの時にそれをやめて、クラスも文系ではなく理系を選び、医師を目指すことにしたんです。きっかけは、球技大会でバスケットボールをやっていて、足首(手じゃないんです)を捻挫したことでした。けっこうひどい捻挫で、しばらく東京のレッスンに通うことができなくて、ふっと考える時間ができたんです。そのとき、「このまま音大に行って、一握りの人しかなれない演奏家になることってどうなんだろう?」と、初めて考えたのです。そのための努力も含めて、自分にできるのだろうか、と。そうしたら、「それはできないな」と思ったのです。もともと、練習が好きではなかったし(笑)。だったら、ピアノは趣味でやろう、と思いました。夢見る少女から現実路線に転換したわけです。で、何になろうかと考えた時に、いちばん身近な仕事が医師だったのです。もともと数学や物理は大好きで得意でしたし、頭の中は理系だったので、すんなり移行しました。
現在は「予防医療」に力を入れていらっしゃいますが、そこに至るまでのお話を聞かせてください。
医学部の6年間を終えた後、私は4年間、大学院に通いながら大学病院の内科の医局に勤めました。博士論文を取った後もそのまま勤め、ほぼ10年そこにいました。でもだんだん「病気の患者さんを診たくない!」と思うようになったんですね。というのは、患者さんが患っている病気の中には、予防できる病気がたくさんあったからです。たとえば、糖尿病とか、高血圧とか、いわゆる「生活習慣病」と言われるものや、アルコール性肝硬変などです。予防できるものなのに、悪くなってからあわてるなんてアホだ!と思ったんです。食道静脈瘤破裂による吐血で緊急入院を繰り返すアルコール依存症の患者さんがいたのですが、この病気の場合、飲まなくなると治りがぐっと早くなり、他の静脈瘤と違って破裂もしにくくなります。そうすると退院できるのですが、この患者さんは、退院すると結局また飲んで、救急で入院してくるということを繰り返していました。本当にもう「ふざけるな!」と思いました(苦笑)。私の資質の中には、「防げるものは防ぎたい」という思い、「自分の健康は自分でつくるべき」という思いが強くあります。それで、それをするために予防医療の分野に行こうと思ったのです。現在は産業医などもしつつ、人間ドックなどの健診をやるところに身を置いています。
ストレングスコーチの他にコーチングや体のゆがみを改善する運動療法エゴスキュー・メソッド関連の資格をお持ちですが、それはどうして取られたのですか?
資格を取ったのはコーチングが一番はじめで、2008年です。産業医として出向く企業の社員と関わっていて、やる気のない社員、仕事や職場の人間関係に行き詰まっている社員がどうしたらもっと楽しく働けるのか、会社に来られるのか、を知りたかったのです。それでいろいろ調べているうちにコーチングにたどり着き、コーチ21(現コーチ•エィ)のCTP(コーチ・トレーニング・プログラム)を学び始めました。ストレングスファインダーは、コーチになってから知ってはいましたが、資格を取ろうなどとは思っていませんでした。たまたま、M’sというコーチングの勉強会で、森川さんがオマハに行かないかと声かけしているところに居合わせて、「学習欲」が刺激されて行きたくなり、2013年の初回のときに一緒に学びに行かせてもらいました。エゴスキュー・メソッド関連の資格、PAS(姿勢調整スペシャリスト)と認定Eサイズトレーナーの資格を取ったのはそれぞれ2016年、2017年ですが、これは、子供の頃から「姿勢こそが健康の大原則」と思っていたからです。でも姿勢を改善する具体的な方法がわからずにずっと探していたところ、たまたまエゴスキューに出会って「これだ!」と直感的に思いました。これは、骨を動かしているのは筋肉なので、その筋肉をいわば“再教育”することで骨格を矯正していこうというもので、寝たきりの人でもできる運動をその人の状態に合わせて組み合わせて行っていきます。これにより、体のゆがみがとれ、腰痛、ひざ痛、肩痛などが改善し、杖を突いていた人が杖がいらなくなったり、猫背が良くなるとともに呼吸が深くなったり、内臓も健全に働くようになります。また、運動機能が高まり、いろいろなスポーツのパフォーマンスも向上します。
ストレングスファインダーを知って、何が変わりましたか?
いちばん変わったことは、周囲との関係性ですね。ストレングスファインダーを知るまでは、自分の中のいくつかの資質が特に仕事で強く出すぎていたと思います。たとえば「責任感」で「〜べき」の思いが強いため、周囲からは“厳しすぎる”と思われていたと思います。それを自覚し、少し緩められたことで、周囲の緊張が和らぐのを感じましたし、自分のストレスも減りました。「慎重さ×分析思考」では、問題が発生した時、次に同じ失敗を繰り返さないために原因を追究していく際に、ゴリゴリに出ていました。相手は“問い詰められ感”があったと思います。そのことにも気づいてから、相手が答えやすい質問を心がけるようになったことで、相手が意見を言いやすくなったように思います。
ストレングスファインダーはどう使っていますか?
仕事でも日常生活でも、無意識に使っていると思います。産業医として企業の社員と関わるときは一人30~60分面談をしますが、これはもうコーチングの対話です。ストレングスファインダーについては、社員にテストを受けてもらえるケースは少ないので、予想の範囲ではありますが、話を聞いているとその人の資質が見えてくるので、それに基づいて対応をしますね。たとえば、「こういうやりかただったらどう?」と具体的な提案もしますし、「今の上司の下だとキツイだろうな」とか「決まったことを繰り返しやっていくのが得意な人だから、プランニングなどをさせてもアウトプットは出なくて、本人も会社も苦しいだろうな」などと思ったときは、本人の同意の上で、必要に応じて上司にアプローチしたり、会社に言って配置転換をしてもらったり、ということを行っています。実際、そうやって配置換えをすることでとても元気になったケースはあります。同席してくれる保健師にはストレングスファインダーを受けてももらっているので、共通言語としてストレングスについて話せるのは助かりますね。
今後はどんな活動をされていきたいですか?
私の中にずっとあるのは、「なぜ人はわかっていても生活習慣を変えられないのか?」というテーマです。現在、年間で5,000件ほどの健診を行っていて、その方たちと話をしています。生活習慣病および予備軍の方たちに対して、「生活習慣を変えれば、改善できますよ」とお話ししても、健診をきっかけに生活習慣を「大きく変えた」と言う人は、その中の1桁ほど、つまり年間で10人いるかいないかです。単純に計算しても0.2%、500人に1人の割合です。「このままいくと大変なことになる」と頭では理解できても、人はどこかで「でも自分は大丈夫」と思ってしまうのですね。これではせっかく健診を受けても、健康に結びつけることができません。でもなんとか、未病の段階で止めてもらいたいと思います。そうすれば、本人も家族も、辛い思いをしなくて済みますし、国としても莫大にかかっている医療費が抑えられます。そのためには、もっと一人ひとりに合わせたアプローチをしていかないとならないな、と思っています。会話の中でキャッチした、その人のツボにはまるところからアプローチをしていきたい。そこにストレングスファインダーを生かしていきたいですね。そして、誰にアプローチしたらいいのだろうかとずっと考えていたのですが、最近思っているのは、お母さんたちを対象とすればいいかも、ということです。いったん身に着いた生活習慣を変えることは、非常に難しい。だったら初めから望ましい生活習慣を身につけるのが一番の早道、と考えたわけです。そして、子供たちの生活習慣に最も深く関わっているのは世の中のお母さんたちなので、彼女らに健康習慣についての意識を持ってもらえるといいのではないかと思っています。ただ、1:1では効率が悪すぎると思っています。もっと一度に多くの人に伝えていけたらな、と思うのです。そこについては、アイディアを考え中です。生活習慣をみんなが自分でよくしていく社会を実現すること、それが今の私のやりたいことですね。
木田さとみ
インタビューを受けた方
木田さとみ
プロフィールの詳細は追加予定です。