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松本 亜樹子 さん

コミュニケーション力をアップさせ、自己理解から他者理解へのレベルを引き上げる

妊活・不妊当事者サポートの第一人者として、朝日新聞「フロントランナー」への掲載をはじめ、読売新聞社のウェブメディアyomiDr.でのコラム連載、渋谷のラジオの「渋谷社会部」で生放送のパーソナリティをつとめるほか、NHKはじめテレビ、新聞などに数多く出演している松本亜樹子さん。
自ら理事長を務める不妊当事者の自助団体NPO法人「Fine(ファイン)」は、平成30年度の「内閣府女性チャレンジ支援賞」を受賞。首相官邸にて受賞式が執り行われた。
そんな松本さんだが、実はメインの仕事は、組織運営を行なっている社長やマネージャー層に対してのエグゼグティブコーチ。企業研修や講演も多い。彼女自身がNPO法人を立ち上げ2,500人もの会員、約100人ものボランティアメンバーの組織運営を15年以上行なっており、そういった経験がマネジメント技術を上げ、企業ニーズを呼んでいるのだ。彼女の得意なことは、組織の運営や人材育成。とりわけメンバー間のコミュニケーションやひとりひとりのモチベーションアップには力を入れている。チームで動く組織においてコミュニケーションの課題は大きい。人には感情があり、そのやりとりがうまくいかないと、様々な問題に発展するケールも多い。とかく効率や成果のみで人を判断してしまう会社組織に対して、人の感情に意識を置いた独自の視点を持ち、それをクライアントに対するコーチングにも活かしている。今回は、松本亜樹子さんに、感情に力点を置いたマネジメント手法についてインタビューした。
妊活と組織マネジメントというのは、全く違う観点な気がしますが。
たしかにパッと聞いたら、類似点は見つからなさそうですが、共通項はいくつもあります。その中で大きな三つを挙げるとすると、1つ目はコントローラブルとアンコントローラブルの見極めが必要なこと。2つ目はコミュニケーションスキルが不可欠であること。3つ目は長期的スパンのゴールを定めるのが重要なこと。これがけっこうぽっかり抜けてしまうことがあると感じています。
1つ目からお話すると、コントローラブルの見極めです。アンコントローラブルなことに対するストレスを抱えるのが一番もったいないことだと私は考えているんですね。ストレスはエネルギーを消耗させます。コントローラブルなことに対して対応策を考えたり、そこに時間や労力、エネルギーを使うことは必要だと思いますが、そうでないものはどうでしょう。そのエネルギーもったいなくないでしょうか。でも、無意識にずっとそこに対するストレスを抱えてしまう。私自身もそうでしたし、人は多かれ少なかれそういうことをしがちです。ですので、まずそこを見極めることは大切な第一歩です。例えば妊活の場合、自分ではコントロールできないことは、妊娠・出産が最たるものです。こればかりはどうしようもない。けれど、ここにこそ大きなストレスがあるのは、誰でもご理解いただけると思います。では、こんな時はどうしたらよいか。妊娠・出産できる/できない、以外のコントロールできるストレスを減らすことはできます。つまり、自分で気持ちのマネジメントをすることが大事なんです。そして妊活のストレスというものは、コミュニケーションから発生することが、とても多いです。例えば、不妊治療には大きく4つの負担があります。お金、身体、時間、心。の4つ。どれも、重そうな負担ですよね。でも、この中で最も大きな負担は、「心」なんです。他の3つすべてにかかってきます。ここでコミュニケーションが重要なキーとなるんです。不妊という事象で、職場、家族、知人、パートナーとのコミュニケーション。そして自分自身とのコミュニケーションが、上手に取れなくなってくることがある。そのストレスがどんどん大きくなってくるんですよね。 だとしたら、ストレスを減らすためには、コミュニケーション力をアップさせること、そのために自己理解、他者理解のレベルを上げていくことが必要になります。そのコミュニケーションがうまくいくとストレスが軽減され、心身の状態が少しずつ変化してきます。
そして、最も大切なのは、ずっと先のゴール・目標を設定しておくことです。妊活中は近視眼的に「とにかく妊娠すること」がゴールになりがちですが、本来のゴール、ビジョンは恐らくもっと先で、「夫婦で幸せにすごしたい」であると思うんです。そのために家族が増えたらいいなと思って妊活を始めた、はず。そこを今一度確認できれば、視点がぐっと上がって、うまくいかない現状いただ振り回されるのではなく、少しだけ落ち着くことができる。これ、組織運営にも同じことがいえると思いませんか。
組織運営というのも、目標達成、人員確保、投資など様々な課題に囲まれています。でも、ここでも最も大きい問題は、コミュニケーションやストレスの問題なんです。
確かに、最近職場でもメンタルヘルスは重要視されています。部下だけでなく上司もそうですか?
そうですね。部下をうまくコントロールできないと悩むマネジメント層の方は多いです。そういう方から、どうすれば思い通り部下をコントロールできるのかという相談を受けることもあります。そうした時は、部下のどこからどこまでが上司としてコントローラブルなのかを見極めることは大切なので、しっかりと考えていただきます。
たとえば、上意下達、指示命令で一時的にエイヤと動かす、ということもあるかもしれません。確かにそれも必要な時があるでしょう。ただ、長期的に見た時にどうか? という視点も必要ですよね。一時的には、そのやりかたも機能するかもしれない。特に少人数のチームなら目も行き届きやすいしフォローもしやすいでしょう。
でも、「それでやってみると、あまり仕事が楽しくない。パワハラと言われるのも怖いし」。という方もいます。おっしゃる通りだなぁと思います。きっとお互いとても疲れるだろうなと。そして最も大切なのは、それは望む状態なのだろうかということです。
そもそもゴールは何かといったら、組織のために組織が望む成果を出すことですよね。そのプロセスでは、むろんお互いにハッピーなやりかたこそが望ましい。望む成果を得られさえすれば、プロセスはどうでしょう。たとえ自分とはやり方が少々違っていたとしても、「まぁいっか」になったりしないでしょうか。けれどもついついその‘違い‘に目が行ってしまい、ストレスを抱えていらっしゃるケースも多いと感じます。部下の何をコントロールしたいのか。それは可能か、そもそも必要か。その視点を持っていただけると、手放されることも多いですね。私はよくマネジメント層の方に「部下を山に登らせるというより、山に登りたいと思わせるのがお仕事ですよね」とお話しします。登りたいと思いさえすれば、人は自分で自ら動くものです。であれば、部下のモチベーションを上げることが、やはり地道だけど王道で、長い目で見ると近道だと思っています。そしてそこにはコミュニケーションが不可欠なんです。
組織にコミュニケーション力をつけるために、必要なことはなんでしょうか?
うーん、そうですね。まずはトップ、リーダーからコミュニケーション力を上げていくことが大事かなと思います。いくら下から頑張っても、上が変わらないとすぐにやる気をなくしてしまいますので。ぜひ、トップから変革を起こし、組織風土を作っていただけるといいと思います。コミュニケーション力を上げるためには、まず自己理解。そこから、自己受容、自己肯定につながり、自己効力感などが持てるようになってきます。他者理解、他者との関わりはそのあとだと思います。まずは自分とのコミュニケーションをていねいに行い、自分を知らないといけない。自分はどんな特徴を持っていて、何を考えがち、何をしがちなのか。そしてどのくらい他人と自分が違うのか、そんな事を知ると自分の得意、苦手がわかって来る。得意なところを生かすことがやりやすくなる。苦手が分かると謙虚になれて、他人に頼ることができる。無理に頑張らなくてもいいと気づく。自分自身を使いやすくなる。そこで、初めて他人との関わりが出てくるんです。
次に他者のとのコミュニケーション。自分がわかったら、他人をしっかり観察してみるんです。すると、違いが分かってくる。相手のすごいところ、得意や不得意がわかってきます。他者の強みをもっと伸ばすために、自分がどう関わればいいのかも、見えてきます。なんなら、強みと弱みをカバーし合うことだってできる。相互で補完しあえるようになれば最高ですよね。そこまで行って、やっと人と輪になれる。
組織に限らず、何でもそう。夫婦だって、組織の最小単位と考えれば、全く同じことなんです。私は、ここに自分、他人を知るための強力なツールとして、ストレングス・ファインダーを使っています。この話は後半でしますね。
突然ですが、松本さんは、小さい頃はどんな子供だったんですか?
究極の負けず嫌いでした(笑)。勉強でもかけっこでも一番が大好きで。私は二人姉妹の長女で、明るくて元気が取り柄。でも、妹は喘息持ちで体が弱かったんです。自然と親の目は妹へ。私はとにかく外で駆け回って遊ぶ元気な子だったため、放っておいても大丈夫と思われていたんでしょうね。でも、私だってもちろん、本当はかまって欲しかったし甘えたいときもあった。だけど「お姉ちゃんはしっかりしていて、えらいね」と言われると、なんとなくそれができなかった。お姉ちゃんだからしっかりものでいないと。明るくしていないと、と。それもあって、よけい負けず嫌いになったのではないかなぁ。と今では思うんです。一番を取った時は、親から特に父からとても褒めてもらえたから。手放しで喜んでくれましたね。褒められると、すごく嬉しかった。それがエネルギーとなり、更に頑張っちゃった。
私、5年生で初めて、かけっこで転校生に負けたんです。その時の悔しさたるや、なかったですよ(笑)。あまりにショックで、生まれて初めてメチャクチャ練習しました。一番を取る事が私のアイデンティだったなぁと思います。
大きくなってくると、流石になんでも勝つ事は無理と大人になったんですが、でも、ここだけはという所では勝ちに行きます。頑張るには、目安があったほうがいい。つまり競う相手が必要。その人に上回ったことで自分を図れますから。自分にとっての指標なんでしょうね。
ただね、私の場合は、別に相手を倒そうとは思ってない。だから「戦う」という気持ちとはちょっと違うかな。スポーツに例えるなら、ボクシングではなく、競泳みたいな感じ。レーンは線引きしてあって、お互い不可侵。自分のレーンの先を行く、みたいな。そう、これはね、私の資質「競争性」ですよね。間違いなく(笑)
ストレングスファインダーに出会ってからどう変化がありましたか?
私は、一言でいうと、自分と他人がこんなにも違うという事を知らなかったんです。私の価値観ってある意味「ふつう=みんなが同じように持っている」と思っていました。ストレングスファインダーを学び、人って違うと分かった時は、本当はびっくりしましたね。忘れもしない、初めてストレングス・ファインダーのセミナーに参加した時、私のTOP5を聞いた数十名の人から、一斉にものすっごく驚かれて、逆にこっちが驚きました。「えっ、私、何か変なの? みんなこうじゃないの?」って。みんなから「へぇ~すごいね! 珍しいね!」と特異な目で見られてしまい、本当に恥ずかしかったです。その時はまだストレングス・ファインダーをよく理解していなかったので、ただただ穴があったら入りたい、今すぐ帰りたい心境でした。「なんだか怖い」「まるで女豹みたいですね」とまで言われ、コンプレックスになりました。それで、数年間、自分の中ではストレングス・ファインダーは封印していました(笑)。
でも、そうは言いながらも、自分のセッションではクライアントさんにストレングス・ファインダーを出していただき、使ってはいたんですよね。そのギャップが自分でもなんともしっくりしませんでしたね。自分は人には言いたくない。怖がられたり、驚かれたりするから嫌だし恥ずかしい。でも、ストレングス・ファインダーはやっぱりおもしろい。奥が深い。使いやすい。知れば知るほど納得いく。なのに自分はというと人にはきかれても「あ、まだ出してないの~」とひた隠しに隠しちゃう。そんな自分も嫌。いや~ジレンマでした。
日本でもストレングス・ファインダーの養成講座が開かれると知った時、いよいよ腹をくくりました。その時は「もう参りました。私の負けです。やっぱりストレングス・ファインダーは好きです」と思い、ストレングスコーチの道を歩みました。ほら、ここでもやっぱり勝ち負けが口から出るんですよね。(笑)これはもうしょうがない。だってこれが私ですから。
こんなふうに、自分を認めたら、もう、いっきいとっても楽になりました。
逆に言えば、自分を認めないってこんなに辛いことだったのかと、心底思い知りました。いいところもそうじゃないところも、全部ひっくるめて自分。隠さなくてもいいじゃない。隠してもしょうがない。だってどうせだだもれだし(笑)。まずは自分自身に全部オッケーを出してあげればいいんだなと思いました。自分を認めないと、他人を認められない。やっと腑に落ちたと思いました。その瞬間、パーっと目の前が明るくなった感じでしたね。
ストレングス・ファインダーで、自分と他者との違いを知り、自分を受け入れてからというもの、コミュニケーションの質が格段に上がりました。自分を認めて、他者との違いを許し、相手をリスペクトする。言葉にするとすごくシンプルなたったこれだけのことですが、私は4~5年かかりました。その後は、足りないことを助けてもらうというのが、すごく楽になったし、お互いに助けてもらいやすくなったと思います。
今後、どういう活動をされていく予定ですか?
コーチングと企業研修に力を入れていきたいですね。コーチングには、もちろん、ストレングス・ファインダーがもれなくついてきます。クライアントのために、自分の手に入れたツールをフルに使っていきたいと思っています。これまでのクライアントは20代から70代の老若男女で、どちらかというと男性が多いのですが、働く女性の方もどんどんサポートできたらと思います。
私の得意分野は、コーチングに加えて、ストレングス・ファインダー、アンガーマネジメント、妊活です。Points of You やカウンセリングも必要に応じて使えるリソースとして備えています。相手は人ですから、多面体。その支援をミッションとしていますので、まだまだ磨かないといけないなと思っています。
企業研修では、ストレングス・ファインダーやアンガーマネジメントの研修に加えて、若い世代へのキャリアプラン研修もぜひ増やしていきたいです。若い世代の方は、男女ともに「ずっと働き続けたい」という人が増えています。しかし特に女性は、やはりさまざまな壁にぶつかりがちです。女性が、妊娠・出産・もしかしたら不妊を経たとしても仕事を続けていくためには、結婚・妊娠・出産を若いうちからプランニングするためのヘルスリテラシーが必要です。これは日本には全く欠けている視点だと思います。
私は、長い人生のキャリアプランを若いうちから組み立てておく、「妊活みらい会議ワークショップ」を開発し、不定期開催しているので、これを企業にまで広げて「働き続けたい」と考える若い世代と「長く会社で働いてもらいたい」と思う企業との架け橋になれればと願っています。
松本亜樹子
インタビューを受けた方
松本亜樹子
プロフィールの詳細は追加予定です。